西照寺一言預かり

 言いたいことがある。残しておきたいことがある。でも、長い文章にするほどではない。今すぐ誰かに伝えたいわけでもない。誰に向けた言葉なのか、自分でもまだ分からない。そのような「一言」を、西照寺では大切に扱いたいと考えています。

 西照寺一言預かりは、本人から実際に現れた短い言葉や文章などを、その人自身から現れたものとして西照寺がお預かりする取り組みです。

 立派な言葉を残すためのものではありません。人生をまとめる必要もありません。長い手紙を書く必要もありません。その時の自分から、「これだけは残しておきたい」と思った一言から始めることができます。

一言だけでも、残しておく

 家族に何かを残したいと思っても、実際に文章を書くことは簡単ではありません。誰に向けて書けばよいのか。どこから説明すればよいのか。どこまで書けばよいのか。きちんとした文章にしなければならないのではないか。そのように考えているうちに、結局何も残せないまま時間が過ぎてしまうことがあります。

 しかし、本当に残しておきたいものは、必ずしも長い文章とは限りません。「ありがとう」「本当は、寂しかった」「元気でいてください」「もっと話したかった」そのような一言だけが心に残っていることもあります。

 西照寺一言預かりでは、その一言を無理に長い文章へ広げる必要はないと考えています。

言えなかった言葉もあります

 人は、思っていることをすべて言葉にできるわけではありません。特に家族との間では、近い関係だからこそ言いにくいことがあります。今さら言うのは照れくさい。相手を困らせるかもしれない。自分でも、どう説明すればよいのか分からない。そのため、何も言わないまま時間が過ぎることがあります。

 しかし、言えなかったことと、何もなかったことは違います。今すぐ誰かに伝えることはできなくても、「自分の中には、確かにこの言葉がある」と残しておくことはできます。

誰に向けた言葉か、決まっていなくても構いません

 言葉を残すというと、多くの場合、誰かへの手紙を想像します。しかし、西照寺一言預かりでは、最初から宛先が決まっている必要はありません。親に向けた言葉。子どもや家族に向けた言葉。未来の自分に向けた言葉。まだ会ったことのない誰かに向けた言葉。あるいは、誰にも渡さないかもしれない言葉。自分でも、誰に向けたものなのか分からない一言もあります。その場合、西照寺が勝手に宛先を決めることはありません。無理に意味を決めることもしません。誰に向けた言葉か分からないのであれば、その状態のまま受け取ります。

本人の言葉に、勝手に意味を付け足さない

 西照寺一言預かりで特に大切にしていることがあります。それは、本人から実際に現れたものを、本人から現れたものとして扱うことです。

 西照寺が本人に代わって言葉を作ることはしません。感動的な文章へ書き換えることもしません。本人が言っていないことを、「きっと、こういう意味だったのでしょう」と付け加えることもしません。一言は短いからこそ、その周囲には多くの空白があります。

 しかし、その空白を他人が勝手に埋めてしまえば、どこまでが本人の言葉で、どこからが他人の解釈なのか分からなくなります。短くても。不器用でも。迷いが含まれていても。本人から実際に現れた言葉であれば、その人の言葉です。西照寺では、その境界を大切にします。

「残すこと」と「今すぐ伝えること」は別です

 誰かに残したい言葉があるなら、直接伝えればよいと思うかもしれません。もちろん、今伝えられる言葉であれば、直接伝えることも一つの方法です。しかし、「残しておきたいけれど、今すぐには渡したくない」という言葉もあります。

 今伝えれば、相手を困らせてしまうかもしれない。今はまだ、自分の気持ちが整理できていない。誰に渡すのか、まだ決められない。そのような時には、今は渡さず、まず言葉だけを残しておくという選択もあります。

 一言を残した時に、その後のすべてを決める必要はありません。

西照寺オンライン相談から、一言預かりへ

 西照寺では、「西照寺オンライン相談」という取り組みも行っています。親のこと。家族のこと。葬儀やお墓のこと。これからのこと。まだ自分でも何を相談したいのか分からない時に、まず僧侶と話してみるための場所です。

 誰かと話している中で、「この一言だけは、残しておきたい」という言葉が現れることがあります。その時、無理に長い文章を書く必要はありません。話すことから、言葉を残すことへ。

 西照寺オンライン相談と西照寺一言預かりは、そのようにつながっています。もちろん、オンライン相談を利用しなければ一言を残せないということではありません。一言だけを残すところから始めることもできます。

一言から始まる、小さな入口

 西照寺一言預かりは、人生を整理するための大きな仕組みではありません。最初からすべてを決める必要もありません。今の自分から現れた一言を、まず残しておく。そのための小さな入口です。しかし、一言について考えていくと、「未来まで残しておきたい」「ある時までは開かないでほしい」「いつか、ある人に渡したい」という思いが生まれることもあります。

 西照寺では、そうした言葉についても、少しずつ考えています。まずは、一言から。本人から実際に現れた言葉を、その人自身の言葉として大切に扱う。それが「西照寺一言預かり」です。


note連載「西照寺一言預かり」

西照寺一言預かりについて、8回にわたって詳しく書いています。

第1回 長い文章でなくても、一言だけでも残せる

第2回 言えなかった言葉は、なかったことになるのだろうか

第3回 親に聞いておきたかった、たった一言

第4回 子どもや家族に、残しておきたい一言

第5回 誰に向けた言葉か、決まっていなくてもいい

第6回 一言を預かるとは、どういうことか

第7回 今すぐ渡さないという選択もある

第8回 言葉を、未来まで預かるということ