おはようございます。住職です。
これまでの連載で綴ってきたように、現在の日本と武家社会当時の日本では、当然ながら価値観や雰囲気は
まるで違うはずです。
もちろん、今でも当時の文化(価値観など)を無意識的に受け継いでいる部分は細かく見ればあると思いま
すし、まるっきり変わってしまったとは考えていません。
しかし、社会の土台となっている基本的価値観が変わってしまったことは確かだと思います。
その証拠が、多くの伝統文化がその存立を巡って厳しい局面を迎えている現実です。
これら伝統文化は、武家社会であった当時は、おそらく社会の主流、換言すれば影響力を保持できていた分
野だったはずです。
現在まで残っている伝統文化で考えて見ると、その代表格は寺院だと思えます。
その他、茶道、華道、落語、歌舞伎、三味線、日本刀など、または地域にみられる伝統工芸品分野などな
ど。
これら代表的な分野を取り上げてみましたが、いずれも現代社会においては、その存立に危機感を覚えてい
る分野だと思われます。
武家社会当時では、特に寺院や茶道(特に侘び茶)、日本刀などは、武士に重んじられてきた分野です。
ここでの特徴は「精神性」に通じる分野であるということ。
「命がけ」という武士の生き様と関連性が深いが故に重んじられた分野であるとも思えます。
また、華道や落語などは、そもそもの源流にお寺が関わっている可能性が高い分野もあります。
例えば、華道は仏教伝来に際して、仏様に供花したことに始まると言われているし、落語の滑稽話の源泉
は、僧侶が庶民に説教する際に滑稽話を用いながら説教していたことに由来するなどと聞いたことがありま
す。
落語や歌舞伎のように、江戸時代に大衆向けに発展した日本文化も沢山あります。
これらは江戸時代が平和だった!ということの裏付けだろうと思います。
あまり争いもなく、平安だったので、大衆も「命がけ」の生活から、「楽しむ」ことへの余裕がでてきた時
代なのだろうと思います。
しかし、それでも帯刀していた時代ですから、「命がけの精神性」は保てていたのだろうと思われます。