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西照寺一言預かり⑦

今すぐ渡さないという選択もある

誰かに残したい言葉がある。そう聞くと、「それなら、その人に伝えればよいのではないか」と思うかもしれません。もちろん、今伝えることができるのであれば、直接伝える方がよい場合もあります。ですが、人の言葉には、残しておきたいけれど、今すぐには伝えられない言葉があります。

たとえば、家族に伝えたいことがあっても、今は関係がうまくいっていない。今伝えれば、相手を傷つけるかもしれない。自分自身も、まだ気持ちを整理できていない。そのようなことがあります。「今言うか、何も言わないか」という二つだけで考えると、言葉は消えてしまいます。でも、「今は渡さないけれど、言葉は残しておく」という選択もあるはずです。

たとえば、「あなたのことを、ずっと心配していました」という一言があるとします。今伝えれば、相手には違う意味で受け取られてしまうかもしれません。でも、時間がたった後には、その言葉の受け止め方が変わることもあります。

同じ言葉でも、受け取る時期によって意味が変わることがあります。子どもの頃には分からなかった親の言葉が、自分が親になった後に分かる。若い頃には反発した言葉が、年齢を重ねてから心に残る。言葉そのものが変わったのではなく、受け取る側の状況が変わったのです。

だから、言葉には、「誰に伝えるのか」だけではなく、「いつ伝えるのか」という問題もあります。

西照寺一言預かりでは、言葉を残したからといって、必ず誰かへ渡さなければならないとは考えていません。今は伝えられない。誰に伝えるのか、まだ決められない。伝えるかどうか自体、まだ分からない。そのような状態もあるはずです。一度残した後に、「やはり誰にも伝えて欲しくない」と思うこともあるでしょう。

反対に、「今なら伝えてもよい」と思う時が来るかもしれません。言葉を残した瞬間に、その後のすべてを決める必要はありません。言葉には、その人なりの時間があります。

まだ伝えない時間。誰に伝えるのか考える時間。そして、ある時になって初めて、伝えてもよいと思える時間。「言葉はある。でも、今ではない。」そのような一言があってもよいのです。

西照寺一言預かりは、本人から実際に現れた言葉を、その人自身の言葉として受け取り、大切に扱う取り組みです。そして、その言葉を今すぐ渡さないという本人の意思も、大切にします。

noteでは、「今すぐ渡さないという選択もある」という題で、もう少し詳しく書いています。言葉を残すことと、誰かへ伝えることは同じなのか。そのことについて考えていますので、関心のある方はお読みいただければと思います。

西照寺は、家族に今すぐ渡せない言葉や、未来に届けたい本人の思いを、本人の言葉のまま静かに預かる寺院です。

  • 住所:埼玉県東松山市大谷2560-4
  • お問い合わせ:0493-39-1445